新設学校の門出を祝う 2つのライトアップ・ワークショップ

世界遺産、熊野古道の通る和歌山県田辺市中辺路町に今春(2025年)開校した「うつほの杜学園小学校」。
そのお披露目となる開校式に合わせて、タカショーデジテックが2つのライトアップワークショップを開催しました。参加したのは入学を控えた児童と地元中辺路の子どもたち、そして社内で直接現場に関わることのない社員です。今回は両ワークショップの内容や当日の点灯の様子を通じて、新たな挑戦となった取り組みをお伝えします。

大人と子ども、それぞれのワークショップを開催

「うつほの杜学園」は、「いっしょに学ぼう、創ろう、冒険しよう。」をモットーに、自然豊かな環境で世界、地域、自然とつながる独自の探究型グローカル教育を展開する私立小学校です。設立の計画時から学園の取り組みに共感したタカショーデジテックは、2024年3月に連携協定を締結。田辺市の目的型企業版ふるさと納税制度を活用し、寄付などを通じて支援してきました。その流れの中で、開校式に先立って新校舎のライトアップを活用した児童向けワークショップを行おうと考えたのが今回のきっかけです。

うつほの杜学園の入り口

うつほの杜学園

タカショーデジテックとうつほの杜学園が連携協定を締結した際の様子

連携協定を締結した際の様子

一方で、入学を控えた児童だけでなく社員向けにもワークショップを行ったのは、日頃から照明の現場に触れている部門だけでなく、広く社員に現場を知ってもらうため。そのため設計開発やWEBデザイン、人事総務といった日頃なかなか点灯現場に立ち会うことのない社員たち4人が集まりました。
現場であるうつほの杜学園の立地は山中ではないものの街灯がなく、夜は足元の不安な場所なため、点灯式に来た人たちが安心して楽しんでもらえるよう、社員向けのワークショップでは樹木や中庭、校舎周辺をいかにライトアップするかを考えてもらうことに。2週にわたり現地視察から照明計画、さらに実際に施工するまでを体験してもらいました。
その後、点灯式2日前に行った児童向けワークショップでは光に親しんでもらうことをメインとしたライトアップのワークショップを開催。「光を使ってどう学習してもらうか」を考え、光の基礎や色の役割を勉強してもらった後、校舎の壁面ライトアップに関わってもらうことで「自分たちの校舎を自分たちで彩る」唯一無二の体験をしてもらいました。

うつほの杜学園での児童向けのワークショップの様子

児童向けのワークショップ

うつほの杜学園でのタカショーデジテック社員向けのワークショップの様子

タカショーデジテック社員向けのワークショップ


校舎周辺を効果的に照らすには? 専門外からの挑戦

先ほどもご紹介したように、社員向けのワークショップは2週にわけて開催。まずは現場を見てみようと、1週目はフィールドワークで事前調査とライトアップの現地実験を実施しました。昼間の明るい状態で校舎周辺や登下校の道などをしっかりとチェックし、どこにどのような照明を設置すれば安全面や景観が向上するのかを実際に照明器具を照射しながら考え、照明計画を練り、その上で翌週には機材を準備して設営と点灯テストを実施するという手順です。

敷地の図面こそあれど、専門的な知識はなく、ケーブル同士を繋ぐドライコーン(結線部)を取り付けるのも入社研修以来というメンバーばかり。ですが、参加した4人は2班にわかれてメモを取りながらどこに何が必要かを真剣に相談し、それぞれのアイデアを提案。中には「植栽の1本だけを緑色に照らしたい」といった独創性ある案も。また、中庭の広い空間の暗さをどうするかという問題に関しても、校舎の3階から照らすことで中庭全体を明るく照らしつつ、樹木のシルエットを映し出す見事な案が生まれました。

うつほの杜学園でのタカショーデジテック社員向けのワークショップの当日の作業の様子1
うつほの杜学園でのタカショーデジテック社員向けのワークショップの当日の作業の様子3
うつほの杜学園でのタカショーデジテック社員向けのワークショップの当日の作業の様子2
うつほの杜学園でのタカショーデジテック社員向けのワークショップの当日の作業の様子4

実際の社員向けワークショップの様子

社員向けのワークショップで考えられたシンボリックな樹木のカラーライティング

シンボリックな樹木のカラーライティング

社員向けのワークショップで考えられた校舎3階からの光で投影された幻想的な樹木の様子

校舎3階からの光で投影された幻想的な樹木

それらをもとにデジテックのライティングチームが図面に落とし込み、全体計画図・配線図を作っていきました。校舎へと続く坂道の壁面は今回の点灯式のための仮設照明なため、大掛かりな工事ができません。そのため背後のフェンスに器具を取り付ける方法を採用しましたが、固定できないため角度調整にてこずったりもしましたが、無事に設置が完了しました。
もともと街灯もない場所に光を灯すことでどれだけ安心感を与えられるか。景観を含めたさまざまなライティング効果を実感してもらえたことと思います。

実際に完成したうつほの杜学園のライトアップ1
実際に完成したうつほの杜学園のライトアップ2

実際に完成したライトアップ


カラフルな光で祝う「新校舎Light Up!大作戦」

児童向けにはタカショーデジテックのライティングデザイナーの花田が講師となり、光の探究ワークショップ「新校舎Light Up!大作戦」を開催しました。参加者は学年もバラバラの小学生たちと地域の子どもたち。まずは光を知ってもらおうと、光と色の関係を学ぶ講義からスタートです。

光は白色だけでなく赤、青、黄色、緑といろんな色を表現できます。そして、色の役割は多岐にわたります。「オレンジならどんなイメージ? 青ならどう?」とリアルなものから雰囲気を表すものまで、例をあげて想像してもらいます。
色は何かを伝えることができるメッセージ性があるもの。私たちタカショーデジテックがライトアップするときも色に意味や想いを込めています。色の組み合わせでも伝えるメッセージは変わってきます。そういった色の役割のお話に加え、色の三原色、光の三原色を説明し、子どもたちも真剣に耳を傾けていました。
黄色と青を重ねると緑色になるように、通常色を重ねるとその2色が混ざり合った色になりますが、光の場合は色の光を重ねると白になります。実際にその現象を見てもらい、さらに光に色をつける方法として光源にフィルムを重ねる実験を行いました。
こうして色の作り方を学んだ後は、3班にわかれて点灯式で新校舎をライトアップする光の色を考えてもらいました。

うつほの杜学園での児童向けのワークショップの当日の作業の様子1
うつほの杜学園での児童向けのワークショップの当日の作業の様子3
うつほの杜学園での児童向けのワークショップの当日の作業の様子2
うつほの杜学園での児童向けのワークショップの当日の作業の様子4

実際の児童向けワークショップの様子

「パーティをイメージして選びました」「おいわいに何があうかイメージしました」「青がうみみたいできれいだから」「すきないろだから」「うつほの色(スクールカラー)にした」と、
色を選んだ理由も十人十色。結果的に1階チームは「みんなが好きな色を入れてお祝いしたかった」、2階チームは「学園のコンセプトを掲げたロゴカラーの配色(黄色と緑と青)に」、3階チームは「カラフルな色でお祝い」というテーマで配色が決定。点灯式当日は、カラフルな色の光が灯った瞬間、大歓声が起こりました。

児童向けのワークショップでのアイデアを経て実際に完成した新校舎のライトアップ

実際に完成した新校舎のライトアップ

今回「うつほの杜学園」の点灯式に向けて行った、別々の目的をもった2つのワークショップ。社員が増えていく中で共通言語をしっかりと保っておく必要性から行った社員向けのワークショップ、そして、子どもたちへの指導を通して改めて光の基礎を知り、子どもたちがおもしろいと感じる部分に触れた児童向けのワークショップ。ともにデジテックにとって新たな挑戦であり、今後の取り組みにも関わっていくであろう大きな一歩となりました。
参加した社員からは「すごく学びがあって楽しかった」という感想も。普段の仕事は照明と直接関わらずとも、専門的なことを知ることで、今後の仕事に生きる部分は必ずあるはずです。
また「うつほの杜学園」では今後も光の魅力を届ける授業を展開予定です。学園のコンセプトでもある探究型のワークを通じて、さらに子どもたちの好奇心と学習意欲を高める取り組みができれば、そして、「うつほの杜学園」が地域のランドマークとなっていく姿をともに見守っていければと思っています。

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この記事を書いた人

CreativeLab.

『Creative Lab.』は、光を中心に屋外空間にイノベーションを起こすクリエイティブチームです。 デザインやアイデアで光の価値を創造するデザイン・企画チーム(AC)と、技術・開発で光の価値を創造する設計開発チーム(DC)で構成されています。 AC / DCで連携を取り、あらゆる屋外空間に合う光や価値を考え、新しくてワクワクする提案を行っています。

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