オーストラリアの光の祭典 「Vivid Sydney2026」の様子を徹底レポート!

今回は、オーストラリアのシドニーで5月から6月にかけて開催された、南半球最大級のナイトフェスティバル、「Vivid Sydney」の視察レポートをお届けします。「Vivid Sydney」は2026年5月22日~6月13日(23日間)の間、プロジェクションマッピングや光のインスタレーションによって、街全体が光り輝くエンターテインメントショーが開催されるイベントです。光(Light)、音楽(Music)、創造(Minds)、食(Food)の4つの要素を融合させた都市型フェスティバルで、年に一度のシドニーの冬の名物です。

筆者は今年で5回目の訪問となりました。本記事では、光(Light)作品の紹介を中心に、今年のテーマ・コンセプト、昨年との比較などをお伝えします。ぜひ最後までお読みいただければと思います。

<2025年レポートはこちら>

 Vivid Sydney 特集記事 ≫

Vivid Sydneyとは?2026年テーマなど

Vivid Sydneyとはシドニーの中心部の都市全体をキャンバスにした世界最高峰のナイトフェスティバルです。2009年に始まり、現在では世界中から数百万人が訪れるシドニーを代表するイベントへと成長しました。シドニー・オペラハウスやハーバーブリッジなど、街全体を舞台に4つの柱「光・音楽・創造・食」をテーマとした多彩なプログラムが展開されます。

2026年は、新ディレクターのBrett Sheehy氏が就任し、Vivid Sydney全体の方向性が見直されました。4つの柱のうちの「Minds 創造」ですが、2025年までは「Ideas アイデア」でした。「Ideas」から「Minds」に変わったことで、主に演劇・パフォーマンスが増え、より幅広い「創造性」を扱うプログラムへ進化しています。

もうひとつ大きな方向性として、「光のイベント」から「総合芸術祭」への転換。「Day and Night(昼も夜も楽しめるフェスティバル)」へと進化する方針となりました。そのため、「Daytime Program(昼間プログラム)」が新設されました。夜だけでなく昼間も楽しめるイベントが増え、没入型・体験型コンテンツがさらに充実しました。

また、全体テーマですが2025年は「Dream」という統一テーマが設定されていました。テーマ重視の2025年に対比して、2026年はテーマを設けず、それぞれの作品が自由な発想で制作されています。

Vivid Sydney 2026会期中の市街の様子

Light作品、全43作品から厳選してご紹介

Vivid SydneyのLight作品の一部①
Vivid SydneyのLight作品の一部②

Night Program(夜のプログラム)

Light作品数は、2025年は48作品でしたが、2026年は43作品。
Light Walkを8.5km前後から6.5kmへ短縮し、ルートを一本化し、歩きやすさを向上。作品を分散させず密度を高める構成となり、作品数は減ったが体験の質を重視した」という印象です。

また、インタラクティブ(双方向や対話型)作品が数多く、写真を撮るための行列が多く見られました。43作品のうち特に印象的だった作品をご紹介します。

●Lighting of the Sails: Opera Mundi(帆に火を灯す:オペラ・ムンディ)

Lighting of the Sails: Opera Mundiの様子①
Lighting of the Sails: Opera Mundiの様子②

Lighting of the Sails: Opera Mundi

フランスのマルチメディアアーティストが、シドニー・オペラハウスの帆をキャンバスに、自然をテーマとし建築・光・映像・音楽を融合し、建物そのものを作品として演出した作品です。
自然界の生命や風・海・空を抽象的な映像で表現し、見る人に自然とのつながりを感じさせていました。音楽や建築との一体感によって閉じられた空間ではないにも関わらず没入感を生み出していました。また、プロジェクターは、ハーバーの対岸に設置されておりその距離 約450m!

●Vivid Light On Sydney Harbour

Vivid Light On Sydney Harbourの様子①
Vivid Light On Sydney Harbourの様子②

Vivid Light On Sydney Harbour

シドニー湾を航行する約40隻のフェリーやボートをライトアップし、街の夜景や水面の反射と一体となった大規模な光の演出を実施。陸・海・空をつなぐ、Vivid Sydneyを象徴するイベントの一つです。船だけを照らすのではなく、港全体を一つの演出空間として活用。水面への反射を効果的に利用することで、光の広がりや美しさを演出していました。多くの船が同じテーマ・色彩で統一されており、一体感のある景観を作り出し、シドニーを象徴する街並みや文化を感じられました。
光は周囲の景観や環境と組み合わせることで、より大きな空間価値を生み出せることが分かります。

●Laser Lightfall

Laser Lightfallの様子①
Laser Lightfallの様子②

Laser Lightfall

大規模レーザーショー。海・空・街並みを一体化させた演出で、シドニー湾全体を巨大なステージへと変えていました。レーザーを線ではなく「空間を描く素材」として活用。海面や夜空、建築物まで含めたスケールの大きな演出でした。音楽と同期させることで、7分間のストーリー性あるショーを実現。

●Musical Mind

Musical Minの様子①
Manawanの様子②

Musical Mind

光・音・ボタンを組み合わせたインタラクティブ作品。
来場者がボタンやパネルを操作すると、光と音が変化し、誰でも気軽に音楽を創り出せる体験型インスタレーション。誰でも直感的に楽しめるシンプルな操作性と光・音がリアルタイムに反応し、自分の操作が作品の一部になる。一人でも複数人でも楽しめ、自然とコミュニケーションが生まれる空間になっていました。

●Piano Walk

Piano Walkの様子①
Piano Walkの様子②

Piano Walk

こちらも音と光が連動するインタラクティブ作品。
巨大なS字型ピアノの鍵盤を歩くことで来場者同士の動きが組み合わさり、5分ごとに一つの楽曲と光の演出が完成。歩くだけで音楽と光が生まれるため、子どもから大人まで誰でも楽しめます。一人で遊ぶだけでなく、周囲の人と自然と協力しながら作品が完成します。

●Voxelevated

Voxelevatedの様子①
Voxelevatedの様子②

Voxelevated

空中に浮かぶLEDキューブ(ボクセル)と光・音を組み合わせ、AIの世界を没入型で表現したインスタレーション。AIの利便性と危うさという相反する側面を、幻想的な空間演出で体感できる作品。
LEDキューブを立体的に配置し、2Dでは表現できない奥行きのある空間を演出。光・音・動きを同期させることで、AIが膨大な情報を処理しているような世界観を表現していました。AIの「創造性」と「監視・制御」という相反するイメージを、一つの作品の中で表現し、技術そのものではなく、その技術が人に与える印象や感情をデザインしていると感じました。

●TIME:WARPED 歪んだ時間

TIME:WARPED(歪んだ時)の様子①
TIME:WARPED(歪んだ時)の様子②

TIME:WARPED 歪んだ時間

レーザー、映像、音響を組み合わせ、「時間」をテーマに表現した没入型インスタレーション。自然の成り立ちから人類の建築、そして未来へと続く時間の流れを、約7分間の映像と光で体験できる作品。
レーザーや映像を効果的に使い、時間の流れを直感的に表現。歴史的な石造りの空間そのものを演出の一部として利用し、場所の持つストーリーと演出が一体化していました。最新技術を使いながらも、技術そのものではなく「何を伝えるか」を重視した作品です。

●Peekaboo Parliament いないいないばあ!国会議事堂

Peekaboo Parliamentの様子①
Peekaboo Parliamentの様子②

Peekaboo Parliament

森の中にいるフクロウをテーマにしたインタラクティブ作品。来場者は、目を閉じているフクロウの間を進み、目を開けたら動きを止めるというゲームに参加しながら、ゴールを目指す体験型インスタレーション。
「遊び」の要素を取り入れることで、多くの人が自然と参加していました。来場者自身の行動が体験の中心となり、見学者ではなく「参加者」として楽しめる作品でした。

●The Daydream Machine

The Daydream Machineの様子①
The Daydream Machineの様子②

The Daydream Machine

AIが来場者の動きや姿勢をリアルタイムで認識・解析し、その人だけの幻想的なアート作品を大型スクリーンに生成するインタラクティブ作品。動きに応じて映像やアートスタイルが変化し、訪れるたびに異なる体験が生まれる。
来場者ごとに全く異なる表現になるため、自身のオリジナルを創る、「創造性を引き出すツール」として活用していました。

●Mycelium Network 菌糸ネットワーク

Mycelium Networkの様子①
Mycelium Networkの様子②

Mycelium Network

森林の地下に広がる菌糸体(マイセリウム)のネットワークを、光ファイバーによる光の演出で表現したインスタレーション。普段は目に見えない自然界のつながりを可視化し、生態系の循環や生命のつながりを体感できる作品。
光ファイバーはイルミネーションや光のイベントでも使われることがありますが、「菌」を表現しているファイバーは初めてみました。

●Afterimage

Afterimageの様子①
Afterimageの様子②

Afterimage

ライブペイントで制作された巨大なグラフィティを、夜はプロジェクションマッピングによって動きのある作品へと変化させるインスタレーション。昼と夜で異なる表情を見せ、制作過程も含めて作品として楽しめました。壁画の完成形だけでなく、制作風景そのものを公開し、作品づくりのプロセスを楽しめるようにしていました。静止画(特にアート作品)に映像を組み合わせる手法は近年よく見かける方法です。

●Wonderverse

Wonderverseの様子①
Wonderverseの様子②
Wonderverseの様子③
Wonderverseの様子④

Wonderverse

子どもたちが光・音・音楽を通じて宇宙を探検する、約40分間の没入型インタラクティブ体験。ホタルのトンネルや光る森、音楽ゲームなどを通じて、遊びながら学べる体験型コンテンツとなっていました。
「見る」だけではなく、子ども自身が光の世界をつくりながら体験できる構成で、光・音・映像・身体の動きを組み合わせることで、自然と学びにつながります。対象年齢を4~10歳に絞り込み、その年代に合わせた体験設計が徹底されていました。

Vivid Sydneyを代表する新コンテンツであるドローンショーは、私たちがシドニー入りする前日に、
ショーの開始直後、1,000機中、89機のドローンが編隊を離脱して落下しました。大半は海へ落下し、一部は桟橋や離陸エリア付近にも落下し 以降全公演が中止となりました。原因は依然不明ですが、無線周波数の環境が予期せず変化し、正確な位置情報を維持できなくなったため安全システムが作動し安全エリア内へ緊急着陸を開始。その結果、多数のドローンが海へ落下しました。

代替プログラムとして、花火とレーザー演出を組み合わせたプログラムが行われました。

Day time Programの充実

●Optik

Optikの様子①
Optikの様子②

Optik

来場者がジャイロスコープ型のオブジェを回転させることで、色彩や音が変化するインタラクティブ作品。昼は二色性パネルによる色彩表現、夜は光と音が連動し、来場者自身が作品を完成させるアート。昼と夜で異なる見え方を楽しめる設計で、何度でも体験したくなる仕掛けが作られていました。

●THERE,NOW,HERE

THERE,NOW,HEREの様子①
THERE,NOW,HEREの様子②

THERE,NOW,HERE

高さ約7mのインタラクティブアート。風やモーター、人の動きによって光・音・影が変化し、来場者がシーソーやスライダーを操作することで、その場だけの空間演出が生まれる体験型作品。
来場者自身が作品づくりに参加でき、風などの自然環境も演出の一部として取り込み、毎回異なる体験が生まれます。

●Manawan

Manawanの様子①
Musical Minの様子②

Manawan

西オーストラリアの先住民族「バルディ・ジャウィ族」にとって重要とされているユーカリの木をモチーフにした大型光彫刻。7本の光る柱で構成され、木々や大地に宿る生命力や癒しを表現した作品。
地域の歴史や文化を、光のアートとして表現し、シンプルな造形ながら光によって力強さや生命感を感じられました。

●Koro Loko

Koro Lokoの様子
Koro Loko

高さ約3.3mのハート型オブジェを、二色性タイルとLEDで演出した大型インスタレーション。昼は太陽光の反射、夜はLEDによる虹色の光で異なる表情を見せ、多くの来場者が写真撮影を楽しんでいました。

その他(Food・Music・Kids)

市内各所でライブやコンサートが多く開催されました。
特にシドニー・オペラハウスで開催されるVivid LIVEは世界的にも評価の高い音楽イベントです。

●Fire Kitchen

Fire Kitchenの様子①
Fire Kitchenの様子②
Fire Kitchenの様子③
Fire Kitchenの様子④

Fire Kitchen

炎をテーマに、食・音楽・トーク・ライブパフォーマンスを融合させた体験型フードイベント。食事を楽しむだけでなく、料理の実演や文化・地域の魅力まで体験できる空間となっています。

「食べる」だけではなく、料理の過程やストーリーも体験できるイベントで炎・照明・音楽を組み合わせることで、食事の価値をさらに高めていました。飲食、ライブ、トークを一つの空間にまとめることで多くの人が長時間滞在したくなる工夫がされているように感じました。

●Tumbalong Kids

Tumbalong Kidsの様子①
Tumbalong Kidsの様子②

Tumbalong Kids

Vivid LIVEのなかでも最も大きなプログラムが、ダーリングハーバーのTumbalong Parkで毎週土曜日17時から開催された無料ライブで、オーストラリアで人気の子ども向けアーティストが出演しました。先述の「Wonderverse」以外にも、「見るだけ」ではなく、「遊びながら体験する」ことを重視した作品が多く見られました。

また、こちらの投稿は、障害のあるKaiさんがVivid Sydneyを訪れ、会場のアクセシビリティ(移動のしやすさ、作品の体験しやすさ、音や混雑への配慮など)を実際に体験しながら紹介しています。

 実際の投稿内容 ≫
障害のあるKaiさんのVivid Sydney体験の紹介内容
Vivid Sydneyにおけるアクセシビリティのよさのイメージ

Accessibility

実際に、私たちも同行者のうち1名が車椅子を使用していたのですが、行けない場所はありませんでした。それは、ベビーカーでも歩きやすいということです。

ライトの作品数は年々減っており、筆者は「Vivid Sydneyは衰退しているのでは、、」と思っていました。しかし今回参加し、体験し、知ることでそうではないことを知りました。

「Smart Light Sydney」として、LED照明・省エネ・持続可能な都市照明の実験的なイベントとして始まり、当初は「光」が中心のフェスティバルでしたが、17年の時を経て、都市全体の創造性を発信する総合芸術祭へと発展しているということだと分かりました。

「我が街の冬を光で活性化できないか」
その想いは私たちも同じです。

タカショーデジテックの重要な取り組みのひとつが「地方創生・地域活性化」です。
“光”をきっかけに、街に人を呼び込み、賑わいを創出する。

地域の魅力を発掘し、夜間の価値を創造することで、人が集まる場所づくりを目指しています。
この視察では、照明演出・デザイン・技術を学んだだけではなく、「地方創生・地域活性化」の面からもとても勉強になりました。

 お問い合わせ ≫

この記事を書いた人

イルミネーションデザイナーよしおか

吉岡理恵/Rie Yoshioka(株式会社RAYS FACTORY) イルミネーション、ディスプレイ等の企画・デザイン。 第37回ディスプレイ産業賞入選 https://www.raysfactory-web.com/

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