光の演出で記憶の宿る場所に人の流れをつなぐ “帝国座テラス”の夜の演出

まちへの想いが起点となったリニューアル

和歌山市の中心市街地として長年にわたって賑わいを支えてきた商店街、ぶらくり丁。その一角に位置する「帝国座」は、週末ともなれば人々が自然と集まる映画館として親しまれてきた場所でした。しかし時代とともに人の流れは変わり、建物もバブル以前に建てられたこともあって老朽化が進み、維持管理の負担が課題となっていきました。この場所をどう活かすべきか——検討が重ねられる中、ビルメンテナンス・不動産事業をはじめ、インテリアショップ「フォレスタ」の経営なども手がける株式会社南北さまが選んだのは、「壊す」でも、土地活用でよくある「駐車場にする」でもなく、人が集まれる場所として「活かす」という道でした。川沿いという立地を逆手に取り、水辺に向かってオープンになった構造で、まちに憩いと滞在の場を生み出す。かつてのぶらくり丁が持っていた賑わいをもう一度、という想いが根底にありました。
こうして誕生したのが、今回ご紹介する「帝国座テラス」。2棟の建物に8店舗が入居するこの施設には、水辺の魅力に共感するテナントが集い、まちづくりの一環として少しずつ新たな人の流れが生まれています。タカショーデジテックも、そうした想いに共鳴するかたちでプロジェクトに参画しました。

近年のぶらくり町の様子
近年のぶらくり丁の様子
帝国座テラスの設計イメージ
帝国座テラスの設計イメージ

「人に寄り添う光」を軸に、2つのプランを提案

照明計画のご相談をいただいたのは、設計事務所との打ち合わせがある程度まとまり、予算感も見えてきた段階でした。限られた条件の中でまず考えたのは「光によって、人の行動がどう変わるか」という問いでした。

帝国座テラスで実際に提案した照明計画書の一部①
帝国座テラスで実際に提案した照明計画書の一部②

そのなかで実際にご提案したのは2つのプランで、共通テーマは「賑わいを創出する照明計画」でした。「あたたかく、ほっとできる雰囲気」「見た目にも華やかさや楽しさがある」そして、「今までにない新しさがある」——この3点を軸に据えました。Aプランは、デザインされた柄を気軽に投影できるグラフィックスポットや、船舶をイメージしたデザインのマリンライトなども活用した華やかさ満点の理想形。サバンナ効果(※)を意識し、視線の先に「次の景色が気になる」奥行きをつくる構成です。Bプランは予算に合わせた現実的な内容で、明るさの確保を重視しつつ、Aプランの考え方を可能な限り反映させたものでした。設計事務所がデザイン段階で照明計画に組み込んでいたローボルトレールも、Bプランに引き継いで組み込んでいました。

グラフィックスポットライトのイメージ
グラフィックスポットライトの
イメージ
マリンライトのイメージ
マリンライトのイメージ
サバンナ効果を意識した演出のイメージ
サバンナ効果を意識した演出

最終的に採用されたのはBプランをベースとしたものでしたが、そこにAプランに組み込んでいたマリンライトを加え、樹木の照らし方にも工夫を施すことで、理想形に近い華やかさを実現しています。「人に寄り添える光で、また来たいと思える空間をつくる」という軸は、プランが変わっても一切ぶれませんでした。

サバンナ効果…人は空間の奥が明るいと安心できるので進みやすくなり、空間の奥が暗いと不安が出てくるため、進みづらくなるという心理効果。

光の配置と色温度による夜の空間設計

帝国座テラスの照明計画では、周辺の街路灯によってある程度の明るさが確保されていることを踏まえ、単純に照度を上げることよりも、光の「見せ方」に重点を置きました。植栽・床面・軒下・デッキと、それぞれの場所に役割を持たせながら、滞在したくなる夜の空間を構成しています。また、配線工事が完了した後には現場でのシューティングにも立ち会い、実際の見え方を確認しながら微調整を重ねました。こうした細部の積み重ねが、夜の帝国座テラスに一体感のある表情をもたらしています。では実際のライトアップのポイントをご紹介します。

植栽 ― シャドーライティングで光と影のコントラストを

植栽はシーンに分けて照らし方を変えて演出しました。白い壁面が映える場所では、シャドーライティングで植栽の影を浮かび上がらせ、光と影のコントラストを強調しました。一方で帝国座テラスの看板の横にあるシンボルツリーは、帝国座テラスの看板も同時に照らすよう、現場でシューティングしながら照明の位置を調整しています。商店街自体が明るい環境の中で埋もれないよう、樹木の照らし方にはひと手間かけています。

帝国座テラスのシルエットライティングされた植栽
シャドーライティングされた植栽
看板と一緒に照らされたシンボルツリー

床面 ― マリンライトのきらめきで動線を自然に誘う

床置き対応のマリンライトは、植栽がある花壇に添えることで足元にきらめきを加える役割を担っています。キラッとした光源が視線を引きつけ、奥へと自然に人の動線を誘導する効果があります。社内でも現地を訪れたスタッフから「マリンライトがキラキラしていて目を引く」という声が届いており、狙い通りの演出になっているようです。壁面にマリンライトが取り付けられた中路は、路地のような雰囲気を意識した構成にすることで、賑わいの中へと引き込まれていくような感覚を演出しました。

帝国座テラスの足元と壁面に取り付けられたマリンライト
足元と壁面に取り付けられたマリンライト

軒下・デッキ ― 滞在性を高める照明構成

テラス空間は「通り抜ける場所」ではなく「過ごす場所」として設計されており、照明計画もその考えに沿い、滞在性を高めることを重視しました。建物からの光に加え、軒下には、屋外でも安心して使えるダクトレール型のローボルトレールシステムのスポットライトを設置。ローボルトレールシステムはあとからでも照明の位置を簡単に変えられるので、テナントの使い方に応じたライティングが可能な構成になっています。デッキ部分にはデッキライトを採用し、夜のデッキでも安全に歩ける明るさを確保しました。

帝国座テラスのライトアップされたデッキ①
帝国座テラスのライトアップされたデッキ②

主な使用器具

フラットライト トラストの商品イメージ
ローボルトレール スポットライトの商品イメージ
ガーデンアップライト ルーメック スリムの商品イメージ
マリンライトの商品イメージ

※自社製品の他にも、光の演出に最適な照明器具を選びご提案いたします。

施工後、帝国座テラスのテラス席で飲み物を片手に談笑する若いグループの姿が見られるようになりました。「テラスでこんな風に飲めるの、いいね」——その何気ない会話が、このプロジェクトの意味を語っています。照明は空間を照らすだけでなく、そこに訪れる人の行動や感情にそっと寄り添う存在です。立ち止まりたくなる光、腰を下ろしたくなる明るさ、そして「また来たい」と思わせる夜の表情。帝国座テラスの照明計画は、そうした光の力がまちに新たな日常を生み出すことを、静かに示しています。かつての記憶を受け継ぎながら、未来へとつないでいく。ぶらくり丁のこの場所が、これからどんな賑わいを生み出していくのか、私たちもともに楽しみにしています。

Credit

照明ディレクター:花田 諒 / RYO HANADA
株式会社タカショーデジテック
営業部 ライティングデザイングループ 兼
Creative Lab. AC マネージャー

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この記事を書いた人

CreativeLab.

『Creative Lab.』は、光を中心に屋外空間にイノベーションを起こすクリエイティブチームです。 デザインやアイデアで光の価値を創造するデザイン・企画チーム(AC)と、技術・開発で光の価値を創造する設計開発チーム(DC)で構成されています。 AC / DCで連携を取り、あらゆる屋外空間に合う光や価値を考え、新しくてワクワクする提案を行っています。

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