<5周年特別企画!>5年で見えてきた さまざまな空間に息づく夜の演出のかたち

この5年間でDIGISPOTで紹介してきた数々の事例を振り返ると、夜の演出は単に空間を照らすものではなく、その場所の価値や体験そのものをかたちづくっていることが見えてきます。地域の風景に溶け込む光、施設の魅力を引き出す光、そして季節や瞬間を彩る光――。今回は、これまでの事例の中から印象的なシーンを切り取りながら、さまざまな空間に息づく夜の演出のかたちをたどります。

地域とつながる夜のシーン

その土地の風景や文化に寄り添いながら、その魅力を引き立てる光を取り入れることで、昼とは異なる落ち着いた表情を夜に生み出し、地域の魅力を改めて発信できるのが光による演出の強みです。強く主張するライトアップではなく、歴史ある街並みや自然環境、ひいては地域と調和するように計画された光は、その場に“もともとあったかのように”溶け込み、訪れる人の記憶に自然と残る夜景をつくり出します。

和倉温泉のライトアップ事例①
和倉温泉のライトアップ事例②

“和倉温泉”のライトアップ

たとえば、石川県能登半島にある“和倉温泉”の街全体を彩るライトアップでは、古くから栄えてきた温泉街でありながら、夜になると光が少なく、その魅力が十分に活かされていないという課題がありました。そこで観光名所を中心に光を取り入れ、街の各所に適切な照明を配置することで、回遊性を高める“光の動線”を形づくりました。夜のまち歩きを楽しめる環境づくりにつながっています。

桑名宗社のライトアップ事例①
桑名宗社のライトアップ事例②

“桑名宗社”のライトアップ

また、約1900年の歴史を誇る三重県桑名市の桑名宗社のライトアップリニューアルでは、地域に根付いた神社だからこその宮司様の想いを受け、夜にも親しんで訪れてもらえるよう境内各所に光の演出を施しました。ライトアップ後は夜の参拝客が増え、夜に行われる祭りのにぎわいも一層高まるなど、光による魅力の広がりが感じられます。

このように、地域に寄り添う光は、その土地の魅力を静かに引き出しながら、夜という時間に新たな価値を生み出しています。

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施設の魅力を引き出す
夜のシーン

建築やランドスケープと一体となり、空間の印象を大きく変える光。アプローチをやわらかく照らす光や、視線を導くライティングによって、訪れる人の動きや過ごし方にも変化が生まれます。昼間とは異なる表情をつくることで、施設そのものの魅力を引き上げ、滞在する時間の質を高められるのも光による演出の特徴です。

トヨタモビリティ富山 双代町EVステーションの光の演出事例①
トヨタモビリティ富山 双代町EVステーションの光の演出事例②

“トヨタモビリティ富山 双代町EVステーション”の光の演出
(設計:本瀬齋田建築設計事務所/写真:©中村 絵)

たとえば、富山市の“トヨタモビリティ富山 双代町EVステーション”では、設計の初期段階から照明計画が取り入れられ、建築と一体となった光のデザインが実現しました。再生可能エネルギーを活用した施設のコンセプトに合わせ、外観には水を想起させる淡い間接光を取り入れ、周囲の景観と調和しながら印象的なファサードを形成。さらに、休憩スペースには和紙を用いた光壁を設け、器具の存在を感じさせないやわらかな光環境をつくることで、充電の待ち時間を心地よく過ごせる空間へと整えられています。

こころをなでる静寂 みやこのライトアップ事例①
こころをなでる静寂 みやこのライトアップ事例②

“こころをなでる静寂 みやこ”のライトアップ

また、岐阜県・下呂温泉に佇む“こころをなでる静寂 みやこ”のリニューアルでは、お庭の改修に合わせて夜の景観づくりを見直し、宿全体の印象を穏やかに整える光の計画が行われました。ウッドデッキ下に仕込んだ間接照明によって“歩きたくなる動線”を生み出すとともに、樹木や石材を照らすスポットライトや、あかりだまりをつくる和風ライトを組み合わせることで、視線を自然と庭へと導く構成に。さらに露天風呂まわりにも光の演出を施すことで、滞在体験そのものを静かに引き立てています。
このように、光は単に空間を照らすだけでなく、建築の意図や過ごし方に寄り添いながら、その場の価値を引き出す要素として機能しています。

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季節やイベントを彩る
夜のシーン

時期やシーンに合わせて変化する光が生み出す、特別なひととき。季節ごとのやわらかな演出や、イベント時の華やかな光は、その瞬間にしか出会えない景色をつくり出します。光の変化によって同じ場所でも異なる表情が生まれ、人の流れやにぎわいを生み出します。

和歌山城 ~光の回廊〜のライトアップ事例①
和歌山城 ~光の回廊〜のライトアップ事例②

和歌山城 ~光の回廊〜のライトアップ

たとえば、和歌山県和歌山市で実施されている「”和歌山城 ~光の回廊〜”では、けやき大通りを彩るイルミネーション“KEYAKI LIGHT PARADE”との連動をスタートとし、街から和歌山城へと人の流れをつなぐ光の演出が取り入れられています。大手門では水面に反射した光のゆらぎを活かした幻想的なライティングを取り入れ、桜回廊では石垣や樹木を活かした奥行きのある演出を展開。さらに、エリアごとに光の密度や色を調整することで、夜ならではの回遊性と滞在価値を生み出し、ナイトタイムエコノミーの広がりにもつながる取り組みとなっています。

“浅草寺”のイベント期間のライトアップ事例①
“浅草寺”のイベント期間のライトアップ事例②

“浅草寺”のイベント期間のライトアップ
(企画制作:株式会社一旗)

また、東京・浅草寺で開催された「ASAKUSA CULTURE & LIGHTS 2025」では、特別公開された伝法院庭園において、歴史的な空間の魅力を損なわない光の演出が求められました。フォトスポットとしての見応えを持たせながらも、光量を抑え、陰影によって建築や庭園の奥行きを引き出す設計とすることで、厳かな雰囲気を保ちながら夜ならではの情緒を演出。肉眼での美しさと写真に収めたときの印象の両立にも配慮し、訪れた人の体験として記憶に残る光景がつくり出されています。

このように、時間や季節、そしてその場に求められる役割に応じて変化する光は、空間に新たな魅力を加えながら、その瞬間ならではの価値を生み出しています。

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こうして振り返ると、光は単に空間を照らす存在にとどまらず、その場所の価値や過ごし方に深く関わっていることが見えてきます。地域に寄り添い、施設の魅力を引き出し、季節や時間の変化を映し出す――さまざまな役割を担いながら、光はそれぞれの空間に新たな意味を重ねてきました。さまざまな空間に息づく夜の演出は、その場所ならではの魅力を引き立てるとともに、訪れる人の記憶や体験にも静かに残っていきます。そうした積み重ねが、夜という時間のあり方そのものを、より豊かにしているのかもしれません。

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この記事を書いた人

編集長 しま

2020年新卒入社 / プロダクトデザインチーム所属 / DIGISPOT編集長 DIGISPOT創刊当初から編集長を務めつつ、屋外照明の商品企画も手掛ける二刀流社員。 専門である屋外照明以外に、LEDサイン・イルミネーションにも幅広く関わっている。 「文章に関わることなら『しま』」と言わんばかりに文章作成や校正の依頼が来る。 今はなきセンター試験の国語で満点を取ったことがあるとかないとか…

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