今回は、冬真っ只中の南半球 オーストラリアのシドニーで開催されたライティングフェスティバルの視察レポートをお届けしたいと思います。
オーストラリア シドニーで2025年5月23日~6月14日に開催されたライティングや音楽のフェスティバル「Vivid Sydney」。
光(Light)、音楽(Music)、アイデア(Ideas)、食(Food)の4つの要素を融合させた、世界最大級の都市型フェスティバルです。
筆者は今年で4回目の訪問となりました。冬とはいえ オーストラリアも温暖化、例年に比べると昼も夜も暖かく、薄手のジャケットで十分で、ヒートテックが必要な日はありませんでした。本記事では、光(Light)作品の紹介を中心にお子様から高齢者、多様な人々が世界から集まり楽しむ様子をお届けいたします。ぜひ最後までお読みいただければと思います。
Vivid Sydneyとは?
2025年テーマなど
前述のとおり「Vivid Sydney」は、約2週間の期間中、光(Light)、音楽(Music)、アイデア(Ideas)、食(Food)の4つの要素でシドニー中を彩る世界最大級の都市型フェスティバルです。
主催や制作に関しては、ニューサウスウェールズ州政府をはじめとし、400以上の地元企業・店舗、世界中のアーティスト、ミュージシャン、思想家、料理の専門家らが参加しています。
■光(Light)
シドニーの主要エリアを結ぶ8kmの無料のライトウォークでは、49の作品が点在しています。
■音楽(Music)
期間中、オペラハウスやライブハウス、特設屋外ステージなどシドニーの色々な場所でアーティストによるパフォーマンスやライブが行われます。
■アイデア(Ideas)
専門家や教授・学者によるトークセッションやパネルディスカッション、映像作品の投影が行われます。
■食(Food)
「Vivid Food」では、シドニーを代表する名店が出店し、火とスパイスをテーマにした屋台「Vivid Fire Kitchen」ではオーストラリア名物BBQなど地元のシェフたちが創造的な料理を提供します。
今年で15周年を迎えるVivid Sydney 2025のテーマは「Dream(夢)」
まず、ビジュアルが昨年と少し変わりました。比べてみましょう。
2025年は濃いピンクとネイビーのカラーリングが採用されました。夢の世界の神秘性、深遠さ、そして無限の可能性を象徴しています。
一方、2024年のテーマは「Humanity(人間性)」だったためピンクと水色を基調としたカラーリングが採用されていました。これらの色は、優しさ、共感、そして人間の感情の多様性を象徴しています。
Light作品、全49作品から
12点を厳選してご紹介
それではメインの光(Light)作品のご紹介。
Lightは5つのエリアを結ぶ約8kmのナイトウォークで、世界的なアーティストによる光のアートやインスタレーションが展開されました。

全49作品から厳選して夢のテーマを感じるものや象徴的だった作品をご紹介いたします。
※今年は目玉イベントの一つドローンショーは安全性とコストの問題から開催されませんでした。
【Kickit Team Tennis】
Artist:Limelight Studio ハンガリー・ブダペストに拠点を置くデジタルアートスタジオ
光るフットテニス。蛍光イエローのボールを踏むと光の筋に変わり前後にボレーされます。
Kickit Team Tennisの作品
【Curiosity】
Artist:Amigo & Amigo 2012年にシドニーで設立されたアートスタジオ
ジョアン・ミロのシュールレアリスム様式にインスパイアされたシーソー。
シュールな夢は好奇心や忘れられない感覚を残します。その感覚を捉え、周囲の世界を新鮮な目で見つめ直すように、と。夢は目を閉じているときだけでなく、いつでも見ることができます。
6つのシーソーすべてが動くと、光と音のシンフォニーが広がります。
Curiosityの作品
【Dream Scene】
協力:チャリティパートナーであるシドニー小児病院財団(SCHF)
自身の夢を描き、インタラクティブな壁画に追加するとリアルタイムで動き夢の中に。無限の想像力を称える「ドリームシーン」は、私たちが力を合わせれば病気の子供たちの未来を変えることができるというメッセージです。
Dream Sceneの作品
【Neon Dreams】
Vivid SydneyとTrolley’dの共同制作
1979年製の郵便飛行機がダーリングハーバーのピアストリート地下道に着陸し、レトロフューチャリスティックなローラーディスコダイナー「Trolley’d」の「Neon Dreams」を届けるために到着しました…というストーリーから始まり、宴の後には、ローラースケートリンクで滑走!飛行機をテーマにした幻想的な空間で、着陸した郵便機をDJブースに改造したような空間です。(参加費はA$23.84)
Neon Dreamsの空間
【Samsung Space to Dream】
大規模なインタラクティブディスプレイで、最新のSamsung Galaxy S25シリーズを実際に操作し、Galaxy AIを体験できます。
Samsung Space to Dreamの作品
【Cygnus】
Artist:Looma Land 光、音、そしてmagicを融合させたアートインスタレーションを制作
『シグナス』は、古代の物語へのオマージュであると同時に、テクノロジーの芸術性を証明する作品。12羽の白鳥が水面を滑るように泳ぎ回ります。水面を漂う鳥たちは光を放ち、サウンドトラックに合わせてリズムを刻みながら変化していく。その動きは人工物と有機物の区別がつかなくなるほどの繊細さでした。
Cygnusの作品
【Endling】
Artist:Legs On The Wallオーストラリアのフィジカルシアターカンパニー
展示ケースの中で一人、最後の人類が自らの運命を演じる。プロジェクション、サウンド、ナレーション、空中パフォーマンス、そしてフィジカルシアターを融合させたパフォーマンス。
光の作品に人間が参加する作品を見たのは初めてでした。
Endlingの作品
【Lighting of the Sails】
Artist:David McDiarmid 20世紀後半の急進的なカウンターカルチャーを代表する人物
アーティストの死後30年を記念して、活動主義と挑発に根ざした彼の生涯の作品が、ビビッド・シドニーのためにシドニー・オペラハウスの帆に投影された新しいアニメーションに生まれ変わります。
Lighting of the Sailsの作品
【Emergence】
Artist:This Is Loop UKを拠点とするアーティストグループ
75個の大型鏡ユニットが全面に鏡面仕上げで覆われた円筒形のパビリオン型構造。個別に制御可能な4列のLEDが正方形を描き、約14,000ピクセルの光を放ちます。トラックに合わせた光の演出で、見る場所によって、集合的な体験から親密な体験まで、3つの異なる体験を楽しむことができます。
Emergenceの作品
【Soleil Nuit】
Artist:Le Pilote Productionsフランスのクリエイティブカンパニー
背中合わせに並べられた鏡面をまとった2枚のディスク、片方は昼間の太陽、もう片方は夜。人間の二面性を捉えています。それぞれのディスクには5,000枚以上の鏡がちりばめられており、風に揺らめきながら反射します。日中は日光によりきらめき、夜はスポットライトの光に照らされ輝きます。
Soleil Nuitの作品
【Stem】
Artist:Mr. Beam オランダのインタラクティブなデジタルアートや没入型体験デザインスタジオ
花のマイクに近づき、花びらに向かって話したり、ささやいたり、歌ったりした夢が、目の前に広がるインスタレーション。声の音量、ピッチ、抑揚の違いによって、芽吹く夢の木の色、成長パターン、形が変化します。
Stemの作品
【Chasing Dreams Tunnel】
Artist:Dr Bronwyn Bancroft・Chas Clarksonの共同制作 オーストラリアを代表するクリスマス照明デザイナー
没入型のトンネルに足を踏み入れ、時空を旅しましょう。ここでは弊社でも取り扱いのあるTwinklyが使用されています。1球ずつのプログラム制御可能な演出が特徴です。来場者はトンネル内を歩きながら、動きに反応する光の変化を体験できます。
Chasing Dreams Tunnelの作品
ダイジェストになりますが、その他作品も画像でご紹介いたします。
その他(Food・Music)
食(Food)
今年3年目を迎える「Vivid Food」は、文化・創造性・そして料理を祝う場として、地元の食文化と世界の味を楽しむことができます。その中のひとつ。
【Vivid Fire Kitchen】
今年は「ファイア&スパイス」で世界最高峰のスパイスを駆使した料理と、直火焼きの人気料理を大胆に融合させた、新しい試みです。ライブでの料理デモンストレーションも行われます。
音楽(Music)
【Tumbalong Park stage】
ダーリング・ハーバーの屋外大型ステージでは毎晩無料のライブパフォーマンスが行われます。
Vivid Sydneyの経済効果は?
最後に、Vivid Sydneyがどのような経済効果を生み出しているか?
2025年は、400以上の地元企業が「Local Business Program」に参加し、前年比で110%の増加を見せています。これにより、シドニーの飲食店や小売店、エンターテイメント施設などが活気づき、ナイトタイムエコノミーの活性化に寄与しています。
シドニーの各地で見受けられる「Vivid Sydney」のサイン
また、ニューサウスウェールズ州政府は、Vivid Sydneyの開催期間中に対象となる飲食店や小売店の営業を午後11時まで延長する特別営業許可を出し、地元ビジネスの支援を強化しています。
これらの要素から、Vivid Sydneyは単なる文化イベントにとどまらず、シドニーの経済成長を牽引する重要な要素となっています。特に、飲食業界の活性化が顕著で、過去最高の51,000人が一晩で飲食を楽しみ、前年から45%の増加を記録しました。また、初週だけで120万人以上の来場者があり、前年同期比で10%の増加となりました。
2025年の経済効果の数字はまだ発表されていないため、2024年のデータになりますが、Vivid Sydney2024には250万人以上の来場者を迎え、約180億円以上の観光消費を生み出しました。これは、同イベントの歴史の中で2番目に高い数字です。
2023年→2024年→2025年と”光(Light)”作品は年々減少傾向にありますが、その分”食(Food)”のエリアや取り組みが増えています。
それは、物価高騰による制作予算減少などの理由が考えられますが、”食(Food)”エリア増加によって消費活動がより行われることで地元企業や飲食店は活気づき、経済効果としてはさらに増加しているのではないかと思われます。
シドニー中が光で彩られ昼より夜の方が人が多く出歩き楽しんでいる様子は何度訪問しても感動します。光の力、というものがいかに大きなものになり得るか。体感できる視察でした。
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