おもてなしの名館の“迎えの顔”を刷新する “水明館”の和モダンな光のリニューアル事例

下呂温泉の名所として
向き合った“迎えの光”

下呂温泉・水明館の外観

岐阜県・下呂温泉を代表する大型旅館、水明館。1932年の創業以来、日本三名泉のひとつに数えられる名湯とともに、旅人を迎えてきました。館内に広がる庭園や多彩な湯殿、行き届いたもてなしの所作。そのすべてが、水明館という場所の記憶をかたちづくっています。
今回のライトアップ計画が動き出したのは、2022年。観光業界が大きな転換点を迎えていたコロナ禍のさなか、宿泊施設向けの補助金制度も追い風となり、「この機会に環境を整えたい」という声が高まりました。水明館さまから寄せられたのは、エントランス、プールサイド、日本庭園という三つの空間についての相談。その中でも最優先で進められたのが、旅館の“顔”となるエントランスでした。最初のアプローチは、営業担当によるシンプルなデモから。光が加わることで、空間の印象がどう変わるのかを、図面や数値ではなく体感として共有していきました。水明館らしい重厚さや落ち着きを損なうことなく、訪れる人の記憶に静かに残る光とは何か。その問いに向き合うことが、このプロジェクトの出発点となっています。

千本格子と光がつくる、
陰影のあるエントランス演出

下呂温泉・水明館のライトアップ時の様子①

エントランスの演出にあたり、キーワードにしたのは「和モダン」。そしてそれを空間デザインとして表現するために採用したのは、タカショーの千本格子でした。日本建築に通じるリズムを持つこの建材に、フレキシブルLEDバーを組み合わせ、格子が生み出す陰影そのものを引き立てる光として設計されています。水明館のエントランスは軒が深く、日中でもやや暗く見えがちな環境です。そこで意識したのが、チェックインが始まる15時の時間帯から自然に美しく見えること。夜だけを主役にするのではなく、昼から夜へと移ろう中でも、違和感のない表情を保つ光のバランスを探究。壁面の茶褐色に合わせ、発光色は電球色を選定。過度に明るさを足すのではなく、旅館にふさわしい落ち着きと温かみを添えることで、訪れる人を静かに迎え入れます。また、エントランス前に立つ大きな樹木にはライトを当て、夜間の“シンボルツリー”として存在感を演出。建物と自然、どちらかが主張しすぎることなく、ひとつの風景として成り立つ構成にしています。

下呂温泉・水明館の15時ごろのライトアップの様子
15時の時間帯でもほどよいライトアップ
下呂温泉・水明館のシンボルツリーとしてライトアップされた樹木
シンボルツリーとしての樹木のライトアップ

建材・照明・サインまでを一体で描く
トータルプロデュース

下呂温泉・水明館のライトアップ時の様子②

今回のリニューアルでは、照明だけでなく、建材やLEDサインを含めたトータルな視点での提案を行いました。エントランス右手の重厚感のある既存の館銘板に対し、左手には導光板を用いた「DIGITEC SIGN BOARD」を採用し新規導入。控えめでありながら、品よく光るLEDサインが、エントランス全体の印象を整えています。LEDサインそのもののデザインも含め、形状や光り方の違いをパースで比較しながら検討。「どの表現がこの場所にふさわしいか」を丁寧に探り、光の見え方と読みやすさ、そして周囲と調和させていきました。

下呂温泉・水明館の既存の重厚感ある館銘板
既存の重厚感ある館銘板
下呂温泉・水明館のリニューアルで追加したLEDサイン
今回追加したLEDサイン
さまざまな仕様・デザインを検討したLEDサインのパース①
さまざまな仕様・デザインを検討したLEDサインのパース②
さまざまな仕様・デザインを検討したLEDサインのパース③

さまざまな仕様・デザインを検討したLEDサインのパース

千本格子の設置においては、水平・垂直のレベル調整やケーブル処理といった細部にも現場で対応。建材と光を切り離さず、立体として空間を捉えられることは、設計から施工監修までを一貫して行える強みでもあります。すべてを一度に変えるのではなく、まずは“迎えの顔”から。水明館のこのリニューアルは、場所の価値を少しずつ積み重ねていく、その確かな一歩となっています。

現場での建材やライト取付具の水平・垂直のレベル調整の様子
現場での水平・垂直の
レベル調整の様子
現場調整によってきれいに整った建材とライトの配置
調整によってきれいに整った
建材とライトの配置

主な使用器具

※自社製品の他にも、光の演出に最適な照明器具を選びご提案いたします。

名所として多くの人を迎え入れてきた水明館。その魅力を大きく変えるのではなく、光によって夜の表情を丁寧に整えていくことが、今回のエントランスライトアップのテーマでした。プールサイド、日本庭園といった他のエリアにも構想が広がる中で、まず手を入れたのは“旅館の顔”であるエントランス。ここから始まった光のアップデートは、今後、敷地全体へと連なっていく可能性を秘めています。水明館の夜の景観づくりは、まだまだこれからも続きます。

Credit

照明ディレクター:山下匡紀 / MASAKI YAMASHITA
営業部 ライティングデザイングループ 兼
Creative Lab.AC  東京オフィス
マネージャー

武蔵野美術大学 非常勤講師
富山市景観まちづくりアドバイザー

2015年度グッドデザイン賞 復興デザイン受賞
2018年度グッドデザイン賞100 受賞
2022年度日本空間デザイン賞 LongList(入選)

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この記事を書いた人

CreativeLab.

『Creative Lab.』は、光を中心に屋外空間にイノベーションを起こすクリエイティブチームです。 デザインやアイデアで光の価値を創造するデザイン・企画チーム(AC)と、技術・開発で光の価値を創造する設計開発チーム(DC)で構成されています。 AC / DCで連携を取り、あらゆる屋外空間に合う光や価値を考え、新しくてワクワクする提案を行っています。

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