光の演出で街の魅力を再発見する “和倉温泉街„のライティングデザイン

石川県は意外と温泉地!?
能登半島の”和倉温泉”とは

石川県は、県庁所在地の金沢を観光の中心に兼六園のような歴史的な場所や海鮮物などさまざまな魅力が詰まった土地ですが、じつは温泉がたくさんある県でもあります。そんな石川県・能登半島のちょうど真ん中にあるのが”和倉温泉”。今から約1200年前の平安時代に海中から湧き出した温泉が時を経て江戸時代ごろには湯治の湯として人気になり、400年ほどたった今でも年間100万人が訪れる日本海側屈指の渚の温泉地です。

和倉温泉のさまざまな観光名所

そんな和倉温泉ですが、古くから栄えてきた温泉街だからこその悩みを抱えていました。それが夜の光の少なさです。古くからある旅館や温泉に関連した公共施設、さらには歴史的な建造物など、照明がないために夜には楽しむことが難しいところがたくさんあり、ときには「まっくら温泉」と言われてしまうことも。せっかくの和倉温泉の魅力を夜にも楽しめるようにしようと取り組んだのが、今回タカショーデジテックが手掛けた和倉温泉の街全体を彩るライティングプランです。


デジテックだからできたこと

和倉温泉街に夜も楽しめる魅力をつくり出すため、今回ライトアップに携わったのはまちづくりを手掛けてきた経験があるタカショーデジテックのライティングデザイナー。2022年4月から10月までの約半年もの時間をかけ、まちづくりに携わってきたデザイナーならではの視点で街全体のライティングプランを提案しました。
当初の予定では10ヶ所の観光名所をライトアップする予定でしたが、優先度の高かった「湯っ足りパーク」「渡月庵の石垣」「和倉源氏ノ海ホタル橋」の3ヶ所を今回はリノベーション。この3ヶ所を手掛けるにあたり、ライティングデザインのコンセプトを「ー光で演出する最高のおもてなしー」としました。プランニングでは、これまでのまちづくりの経験を活かした光の演出やテクニックを組み込んだ計画を提案するだけでなく、屋外照明器具の設計開発の技術も活かし、その場所に最適な光を灯すための設置用の取付架台も設計しました。また、正しく照明器具を施工できるように設置方法まで資料として手配し、施工後には点灯確認に立ち会い、より理想の空間に近づけられるように演出の細部にまでこだわりました。屋外照明のさまざまなプロフェッショナルチームが存在する「タカショーデジテックならでは」の空間演出に仕上がりました。

照明計画書
器具取付架台設計
照明器具の設置方法の指示書

街の名所を彩るライティングプラン

和倉温泉街のライトアップの全体像をご紹介しましたが、ここからは、「湯っ足りパーク」「渡月庵の石垣」「和倉源氏ノ海ホタル橋」の3ヶ所に施されたライトアップを見ていきましょう。

夜でも温泉を楽しめる「湯っ足りパーク」

「湯っ足りパーク」は七尾湾を眺めながら無料で足湯を楽しめる和倉の人気スポットです。しかし、施設が大通りから奥まった位置にある上にパーク内を照らす照明も少なく、夜にはなかなか足を踏み入れにくい雰囲気になってしまっていました。そんな「湯っ足りパーク」には2つのライティングを施しました。
1つ目が「湯っ足りパーク」のメインである足湯施設「妻恋舟の湯」。七尾湾を眺めながら足湯を楽しめるこちらの施設、今までは夜になると外を見ても真っ暗な景色が広がっていましたが、施設の周りを囲むように植えられている樹木たちをライトアップすることで、足湯をしながら楽しめる景色がうまれるだけでなく、施設を外から見た時の印象も明るくなりました。

【Before】
【After】

2つ目が「湯っ足りパーク」の海際にある遊歩道。この遊歩道には背の高い松の木が立ち並んでおり、照明を取り入れる前は大きなシルエットが海際に並んでいて暗い印象になってしまっていました。この並木をしっかりとライトアップすることで美観をつくることができるのはもちろん、大通りから見た海際が明るくなるので「空間の奥の方へさらに進んでみたい」という好奇心を生じさせるサバンナ効果を生み出しています。美観づくりに加え、集客効果も期待できるライトアップに仕上がっています。

【Before】
【After】

歴史的な遺産を味わう「渡月庵の石垣」

大正浪漫の宿 渡月庵が建てられている「石垣」は、実は歴史的にも古い建造物で、和倉温泉観光協会の方々から「歴史的な建造物を観光の要素として活かしたい」とお話があり、ライトアップを施しました。石垣だけを均等に照らすことで石垣自体を美しくみせながら、静かな水面に渡月庵と石垣を浮かび上がらせました。ライトアップされ水面に映る石垣は、さざ波によって絶えず揺れ動いており、何とも言えない風情を感じられます。またライティングプランとしては、周辺が住宅街であることも考慮し、周りから見ても眩しくないような照明器具の配置を行いました。

【Before】
【After】

↑ 水面が揺れ動く様子はこちら ↑

人が集まる橋へと生まれ変わった
「和倉源氏ノ海ホタル橋」

「和倉源氏ノ海ホタル橋」は元々、「太鼓橋」という違う名前のついた橋でした。しかし橋のある場所が少し変わっており、駐車場のど真ん中の水も何もないところでした。地元の人ですら、なぜそこに橋があるのか、なぜ太鼓橋と呼ばれているのか知らないほど。そんな太鼓橋を「人が集まる橋」にするため、華やかな光の演出を施しました。テーマは、和倉で見ることができることにちなんで「海ホタル」に。青い光をベースにまるで海ホタルが橋の上を舞っているかのような演出にしました。「海ホタル」は、演出のテーマとしてだけでなく橋そのもののテーマとしても採用され、太鼓橋から「和倉源氏ノ海ホタル橋」に生まれ変わったのです。

【Before】
【After】

「和倉源氏ノ海ホタル橋」に施された光の演出はライトアップだけではありません。訪れた人が橋を通って楽しんでもらえるよう、人が通ると光の色が変わる仕掛けも施しました。光の変化も四季折々で変化するようになっており、それぞれの季節に合わせた彩りを楽しめます。

〈季節ごとのカラーテーマ〉

春の装いを感じさせる色を織り交ぜた演出
夏の暑さや風吹く涼しさを感じさせる色を用いた演出
紅葉でさまざまな色に染まる様子を散りばめた演出
冬の寒さの中に印象的な色彩のグラデーションの
動きや温かみと雪の白さを演出

また、これから和倉温泉街の新たな人気スポットになることを願い名前ごと「和倉源氏ノ海ホタル橋」として生まれ変わったことを表現するため、橋の入り口にLEDサインで名前がしっかりとわかるようにしました。LEDサインで表現したことで、夜のライトアップの演出にも負けない存在感で橋の名前がわかるようになりました。


主な使用器具

※自社製品の他にも、光の演出に最適な照明器具を選びご提案いたします。


今回行った和倉温泉街の光のトータルソリューション。今回ご紹介した3ヶ所以外にも、和倉温泉のさまざまな場所を光の演出で彩りはじめています。光の演出でさらに高まった和倉温泉の魅力を体験しに、ぜひ足を運んでみてください。

能登半島 和倉温泉

〈和倉温泉についてのお問い合わせ先〉
和倉温泉観光協会•和倉温泉旅館協同組合
〒926-0175 石川県七尾市和倉町2-13-1
TEL:0767-62-1555
FAX:0767-62-2611
HP:https://www.wakura.or.jp/


Credit

照明ディレクター:山下匡紀 / MASAKI YAMASHITA
株式会社タカショーデジテック Creative Lab.
企画グループ ライティングデザインチーム

武蔵野美術大学 非常勤講師
富山市景観まちづくりアドバイザー

2015年度グッドデザイン賞 復興デザイン受賞
2018年度グッドデザイン賞100 受賞
2022年度日本空間デザイン賞 LongList(入選)


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この記事を書いた人

編集長 しま

2020年新卒入社 / プロダクトデザインチーム所属 / DIGISPOT編集長 DIGISPOT創刊当初から編集長を務めつつ、屋外照明の商品企画も手掛ける二刀流社員。 専門である屋外照明以外に、LEDサイン・イルミネーションにも幅広く関わっている。 「文章に関わることなら『しま』」と言わんばかりに文章作成や校正の依頼が来る。 今はなきセンター試験の国語で満点を取ったことがあるとかないとか…

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