変わらない建築美と変化する光で表現する 「紀陽銀行」130年の軌跡をこめたライトアップ

和歌山県に本店を置く唯一の地方銀行、紀陽銀行様(以下、敬称略)。地域密着型の金融機関として、昔から地域経済を支え続けてきた、和歌山を代表する銀行です。

2025年は創業から130周年の節目の年。その記念事業の1つとして、本店ビルのライトアップを実施することとなり、タカショーデジテックが照明計画と演出を担当させていただきました。今回は約1年にわたり点灯する、このライトアップの取り組みをご紹介します。

130周年の節目に、記憶に残る光を。

紀陽銀行さま本店のライトアップ

和歌山を代表する金融機関である紀陽銀行が2025年に迎えた130周年。この節目を記念し、記念キャンペーンや記念講演会、周年記念コンサートなど、さまざまな記念事業を計画しています。その1つとして5月1日から展開されているのが本店ビルのライトアップです。

130年前というと、明治28年(1895)。大きな節目となる年に、記憶に残る光を灯すため、「四季」をテーマに約1年にわたって変化するライティングをご提案させていただきました。目指したのは建物の重厚感を生かしながら、日々の暮らしの中で“ふと足を止めたくなる”ような、地域に開かれた光の存在。築71年と関西の主要地銀の中でも最も古い建築だという特徴的な銀行建物は、周辺のシンボリックなスポットとなっています。その建物に光をあてることで、夜もまた昼間とは違った存在感を感じられる空間になりました。


「四季×時間×イベント」
──変化を楽しむ光のプログラム

約1年間という長期にわたるライトアップであることから、より目を向けてもらえるライティングにしようと、四季ごとのテーマカラーを設定し、3分間のプログラムの中で色が変化する構成を組み立てました。春の草花を思わせるグリーンとピンク、黄色を組み合わせた「春」、白、黄、に涼しげな水色を取り入れた「夏」、こっくりとした深みあるオレンジ、赤、黄と暖かみある配色の「秋」、落ち着いた青を基調とした癒しの「冬」と、それぞれのベースカラーでライトアップしながら、時間経過とともに色の強弱や色そのものが変わるようプログラム。さらに、クリスマスやバレンタインなどのシーズンイベントには、それぞれテーマ性をもたせた色や光の動きを取り入れ、地域の方や通りを歩く人たちに話題と彩りを届けます。

紀陽銀行さま本店の春のイメージのライトアップ

春の草花を思わせる
「春」のライトアップ

紀陽銀行さま本店の夏のイメージのライトアップ

涼しげな色を取り入れた
「夏」のライトアップ

紀陽銀行さま本店の秋のイメージのライトアップ

深みと暖かみがある
「秋」のライトアップ

紀陽銀行さま本店の冬のイメージのライトアップ

落ち着いた青を基調とした
「冬」のライトアップ

紀陽銀行さま本店のクリスマスのイメージのライトアップ

クリスマスをイメージさせる色の
ライトアップ

バレンタインにあわせた
ほんのりパステルカラーのライトアップ

実際のライトアップ動画
(イベント時のライトアップ)


建築と調和する光──シンボリックな演出計画

昭和29年の戦後の復興期に建てられ、シンプルな中に銀行建築としての風格を備えた名建築。その佇まいを生かすため、デザインのポイントとしたのは「建築美と光の調和」でした。特徴的な正面の柱を両サイドから照らすことで重厚さを強調し、壁面全体へのライティングで奥行感を演出。また正面からの照射によって、窓に印象的な色のニュアンスをプラス。建物そのものをキャンバスに見立て、空間全体で季節や時間を感じられるように構成しています。

紀陽銀行さま本店の奥行感を演出する壁面と柱のライトアップで

壁面と柱のライトアップで
奥行感を演出

紀陽銀行さま本店の窓に印象的な色をプラスする正面からの光の照射

正面からの照射で
窓に印象的な色をプラス

計画当初、窓ガラス部分は内側から光らせる予定でしたが、最初のプラン後に現地調査で確認したところ、運用面、設置条件により困難な面が出てきたので、外からのライトアップに変更するなど、微調整をしながら最終的なライティングデザインが完成しました。

今回の記念ライトアップを企画した紀陽銀行の橋本奈都さんは「昼間とは異なる表情を見せる建物の姿に、改めてその魅力を再認識する機会となりました。ただ光らせるだけでなく、時間によって変化するライティングは、見るたびに異なる印象を楽しめ、飽きのこない仕上がりに。建物の特性を活かした照明設計であり、事前にご提示いただいた最終イメージ案どおりの仕上がりになったと感じています。今後のお客様や地域の方々の反応も楽しみです」と嬉しい感想を聞かせてくださいました。

この建物は、130周年事業の一環として翌年から解体され、建て替える計画が進められています。まちを見守ってきた歴史ある建築の姿を、最後に華々しく彩ることができたこと、私たちも嬉しく思っています。


今回のライトアップは、130年という節目を彩るだけでなく、地域に新たな日常の風景を生み出す試みでもあります。タカショーデジテックは今後も、地域のストーリーに寄り添いながら、光の力でその価値を可視化していく空間づくりを続けてまいります。

紀陽銀行本店のライトアップは2026年3月31日までの夕刻から22時まで行っています。期間中にぜひご覧になってみてください。

紀陽銀行 本店営業部

〒640-8033 和歌山市本町1丁目35番地

TEL:073-423-9111

HP:https://www.kiyobank.co.jp/

Credit

照明ディレクター:花田 諒 / RYO HANADA

株式会社タカショーデジテック
営業部  ライティングデザイングループ 兼

Creative Lab. AC マネージャー

>>ライティングのご依頼はこちらまで

この記事を書いた人

CreativeLab.

『Creative Lab.』は、光を中心に屋外空間にイノベーションを起こすクリエイティブチームです。 デザインやアイデアで光の価値を創造するデザイン・企画チーム(AC)と、技術・開発で光の価値を創造する設計開発チーム(DC)で構成されています。 AC / DCで連携を取り、あらゆる屋外空間に合う光や価値を考え、新しくてワクワクする提案を行っています。

≫ 「CreativeLab.」が書いた他の記事を見る

TOP