建築のスタイリングと空間に寄り添う “陽日の郷 あづま館„の光の演出

自然と温泉を楽しみ
心身を整えられる温泉旅館”あづま館”とは

福島県・岳温泉に佇む「あづま館」は、自然に囲まれた穏やかな立地で、四季の表情を感じながら過ごせる温泉旅館です。源泉掛け流しの湯と、地域の食材を活かした料理、広々とした館内空間が特徴で、ゆったりと滞在できる“癒しの時間”を求めて多くの方が訪れます。
そんなあづま館の屋上に新設されるサウナエリアと複合施設の照明計画を、タカショーデジテックが手掛けました。また建材も扱うタカショーグループらしく、光の演出だけでなく建材の提案も行いました。では実際にそれぞれのエリアに施したライトアップについてご紹介します。

リニューアルで新設されたサウナエリア
サウナエリア
リニューアルを行ったエントランスエリア
エントランス

屋上で過ごす“整い”の時間の価値を高める光

屋上サウナエリアの外気浴スペース

まずは今回のリニューアルで新設されたサウナエリアの光の演出からご紹介します。実際に照明計画を手掛けたのは、サウナで体を温め切った後に体を整えるための外気浴スペース。ライトアップを行ったのは大きく分けて3カ所、①水盤&水風呂、②ウッドデッキ、③外気浴スペースを囲むフェンス、となっています。

屋上サウナエリアの外気浴スペース内の水盤と水風呂の演出
水盤&水風呂(①)

①水盤&水風呂のエリアでは、実際に水に浸かることができる水風呂と、景観として魅せるための水盤に分かれていますが、「水盤と水風呂のつながりを美しく見せたい」という要望をいただきました。そのため、水盤と水風呂が分かれている部分も考慮しつつ、水風呂・水盤のそれぞれの壁面にウォーターグランドライトを提案。水底をしっかりと照らすことで、夜でも安全に水風呂を利用できるようにしつつ、水と光の組み合わせで夜にしか味わえない美観も演出しています。

屋上サウナエリアの外気浴スペース内のウッドデッキとフェンスの演出
ウッドデッキとフェンス(②&③)

外気浴を楽しむための②ウッドデッキのエリアでは、木材となじみやすい電球色の間接照明を採用。階段・腰掛けるための段差の下に仕込むことで、水風呂同様、美しい景観と安全性の確保を同時にかなえています。また、電球色との相性がいいデッキの色柄の選定に加え、過去にほかの案件で静電気が問題になったことがあったため、その対策も兼ねた商品を提案しました。外気浴をくつろいで過ごせる空間演出に仕上がっています。


③外気浴スペースを囲むフェンスは、室内から見たときに外気浴スペースの突き当りになる部分のため、空間に奥行きを感じさせられるようにグランドライトでしっかりとライトアップしています。また、フェンスを照らしつつも通りかかる利用者がまぶしくないように、グレアカット仕様(光源を半分カバーすることで眩しくない仕様)を採用しています。

屋上サウナエリアの外気浴スペース全体の雰囲気

また、①水盤&水風呂のエリアを白色、②ウッドデッキ③外気浴スペースを囲むフェンスを電球色というふうに、夜景に近くなるにつれて光の色味が変わるように仕上げることで空間の光にグラデーションが生まれ、全体でスタイリッシュな演出に仕上がっています。


エントランスが迎える、あたたかな光のゲート

エントランスエリアの光の演出

次にエントランスエリア。こちらでは、建築のスタイリングと植栽を活かしながら照明をプランニングしました。

建物のルーバーと暖炉ポールを活かした光の演出の様子
建物のルーバーと暖炉ポールを活かした演出
足湯エリアに取り入れられた間接照明の様子
足湯エリアの間接照明

建物のファサードや足湯の蹴上は、建築の雰囲気を活かすために間接照明で統一しつつも、安全性のため明るさ確保も意識した演出に。また、建物のルーバーだけでなく足湯エリアまで一直線に伸びる暖炉ポールまで光が届くライン照明を採用し、建物全体が光でつながるウェルカムゲートのような表情をつくり出しています。

エントランスエリアのアプローチに取り入れられた下方配光のポールライト
下方配光のポールライト
エントランスエリアのライトアップされた植栽
ライトアップされた樹木

建物まで続くアプローチには、下方配光のポールライトを選定。さらに、樹木もやさしく浮かび上がるようにライトアップすることで、ポールライトのやさしく足元に広がる光、植栽をやわらかく照らす光が、建築躯体側の間接照明との一体感を生み出し、エントランス空間全体で柔らかい光が連続しているように演出されています。


主な使用器具

※自社製品の他にも、光の演出に最適な照明器具を選びご提案いたします。


今回の“陽日の郷 あづま館„の光の演出では、屋上のサウナエリアでの“整う”時間の価値をより深めるために、水盤と水風呂のつながりが感じられる光の配置や、低色温度のグラデーション、眩しさを抑える仕様など、細やかな調整を重ねました。エントランスでは、必要な明るさを確保しつつ、ルーバーや暖炉ポールを照らすライン照明によって“あたたかな光のゲート”をつくり、足湯やアプローチにも間接照明を用いて心地よい導線を整える演出に仕上げました。
空間の夜の価値を高めるために、光によるさまざまな演出を取り入れてみませんか?

Credit

照明ディレクター:山下匡紀 / MASAKI YAMASHITA
営業部 ライティングデザイングループ 兼
Creative Lab.AC  東京オフィス
マネージャー

武蔵野美術大学 非常勤講師
富山市景観まちづくりアドバイザー

2015年度グッドデザイン賞 復興デザイン受賞
2018年度グッドデザイン賞100 受賞
2022年度日本空間デザイン賞 LongList(入選)

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陽日の郷 あづま館
〒964-0074 福島県二本松市岳温泉1-5
TEL 0243-24-2211
HP:https://azumakan.com/


この記事を書いた人

CreativeLab.

『Creative Lab.』は、光を中心に屋外空間にイノベーションを起こすクリエイティブチームです。 デザインやアイデアで光の価値を創造するデザイン・企画チーム(AC)と、技術・開発で光の価値を創造する設計開発チーム(DC)で構成されています。 AC / DCで連携を取り、あらゆる屋外空間に合う光や価値を考え、新しくてワクワクする提案を行っています。

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