夜の環境と、歴史的建造物の価値を守る “下呂温泉合掌村”の夜を形づくる光の提案
合掌造りを「照らす」のではなく
「引き立てる」光へ
冬のイベントとして行われてきた下呂温泉合掌村のライトアップを、夜間営業に対応した常設の照明として見直す――。今回のプロジェクトは、そうした運用面のリニューアルをきっかけにスタートしました。文化庁の補助金を活用しながら重視したのは、夜の景観や環境への配慮と同時に、「合掌造り」という歴史的建造物の価値をいかに損なわずに伝えるかという点です。
これまでのライトアップは、水銀灯を用いて建物の四隅から照射するシンプルな構成でした。一見すると簡単に明るくなるのでわかりやすい手法ですが、逆に捉えると、合掌造り特有の構造や素材感、茅葺き屋根の質感までを丁寧に表現するには限界がありました。また水銀灯はエネルギー効率もよくないため、これまでイベントとして短期間のライトアップしか行われてきませんでした。
そこで今回の計画では、単に明るさを足すのではなく、歴史的建造物の「どこを、どのように見せるか」を起点に照明計画を構成。苔むした茅葺き屋根や木部の表情が、昼間とは異なる陰影として浮かび上がるよう、光の角度や高さ、照射位置を細かく検討しています。過度に主張する光ではなく、建物そのものの佇まいを引き立てることを目指しました。歴史的建造物であるからこそ、照明が前に出すぎてはいけない。光はあくまで脇役として、合掌造りそのものの存在感を引き立てる役割に徹した照明計画をご提案しました。
夜の景観を前提に、建築と向き合う

下呂温泉合掌村の魅力は、建物単体だけでなく、夜空や周囲の自然環境を含めた景観全体にあります。そのため今回の照明計画では、上空への不要な光を極力抑え、光を下方向へ集める設計を基本としました。これは単なる光害対策というだけでなく、合掌造りの輪郭や屋根の表情を過剰に強調しないためでもあります。強い光で全面を照らすのではなく、必要な部分に必要な明るさの光だけを届けることで、建物の陰影や奥行きが自然と際立つ構成を目指しました。照明器具の位置についても、実際の見え方を確認しながら細かく調整を行っています。また、今回は施設の茅葺き屋根を主役に据えたライトアップにするため、光そのものが目立つ演出ではなく、素材の美しさや建物の佇まいを丁寧に伝えることを重視しています。合掌造りの集落がもつ魅力と夜の環境を前提に計画することで、結果として建築そのものの価値を引き立てる照明計画となりました。
建築の素材感や佇まいを魅せるライトアップ
※ムーンライティング…月明かりを表現するライトアップの手法。樹木などを上から下に光を照射することで、枝から漏れでる光がまるで月光のような雰囲気を醸し出し、幻想的な空間をつくることができます。
「仮設」で光を確かめ
歴史的建築にふさわしい「常設」へ
当初は器具レンタルによる仮設ライトアップとして計画がスタートしました。そのため、足元の導線照明として想定していたパススタンドライトは固定が必要のため採用できず、代替案としてツリースポットライトという小型スポットライトを用いた足元照明で検証を行うことに。実際に光を入れてみることで、明るさの感じ方や安全性、建物への影響を確認しながら、夜間営業に必要な最低限の照度を見極めていきました。仮設だからこそ、実験的に試し、調整できた部分も多く、そのプロセスが常設照明の精度を高めています。茅葺屋根のライトアップについても、事前に照射テストを実施。4方向から照らす構成のため、グレア(眩しさ)カットの調整は現地での細かな対応が不可欠でした。屋根を照らす光をあえて周囲の樹木にもわずかに漏らすことで、建物と自然が光でつながる夜景を形成しています。
下呂温泉合掌村の風景になじむトーチパススタンド カゴメ
検証や、ライトアップによる効果の経験を経て常設として採用されたトーチパススタンド カゴメは、和風建築との親和性が高く、約10mピッチで配置することで、主張しすぎない導線の光を実現。仮設での確認があったからこそ、より歴史的建造物にふさわしい常設照明へとつなげることができました。
主な使用器具
※自社製品の他にも、光の演出に最適な照明器具を選びご提案いたします。
夜の環境や歴史的建造物への配慮が求められる今回の“下呂温泉合掌村”では、まずイベント期間中の仮設照明として光の演出を試みました。光害に配慮した配光や照度、合掌造りの佇まいを引き立てる控えめな光の重なりによって、夜の景観がやさしく形づくられていく様子を、来場者や関係者が実際に体感。その中で、夜の合掌村の魅力を損なうことなく、価値を高めているという手応えが共有され、仮設での取り組みをきっかけに、光の演出を常設として取り入れる判断へとつながっていきました。今回のように、まずは仮設で光の効果や夜の見え方を確かめながら、その場所にとってふさわしい在り方を探っていく進め方は、夜の環境や歴史的建造物への配慮が求められる多くの場面で有効だと感じています。夜の景観づくりに悩まれている方や、「どのように照らすべきか」から一緒に考えたいと感じている方も、ぜひお気軽に声をかけていただければと思います。
Credit
照明ディレクター:山下匡紀 / MASAKI YAMASHITA
営業部 ライティングデザイングループ 兼
Creative Lab.AC 東京オフィス
マネージャー
武蔵野美術大学 非常勤講師
富山市景観まちづくりアドバイザー
2015年度グッドデザイン賞 復興デザイン受賞
2018年度グッドデザイン賞100 受賞
2022年度日本空間デザイン賞 LongList(入選)
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