企画・開発・デザイン三位一体で生まれる 新たな商品開発スタイル

ものづくりには物語がつきものです。
今期(2024年)で20周年を迎えたタカショーデジテック。組織形態の再編の中で、以前からあった「Creative Lab.(クリエイティブラボ)」も、役割をより明確にする編成が行われました。
そんな変革を経て新たなCreative Lab.の中で誕生した新商品「トーチポール トラスト」「トーチパススタンド トラスト」。通常の企画・開発にデザイン要素を特化させて作られたこの2商品。企画開発に携わった島朱里さん(本社Creative Lab.ACプロダクトプロデュースチーム主任)、斎藤勝美さん(大阪オフィスCreative Lab.ACマネージャー)、丸吉彬さん(大阪オフィスCreative Lab.DC 設計開発チームチーフ)の3人に、座談で開発秘話を伺いました。

さりげなく、空間になじむ光を

3者でトーチポールについて話し合っている様子1

左から、島(商品企画)、斎藤(デザイン)、丸吉(設計開発)

斎藤:この商品のスタートはもともと島さんでしたよね。これ(トーチポール / トーチパススタンド)って、どういう発想から始まったんでしょうか。

従来のポールライトが点灯している様子
トーチポールが点灯している様子

従来のポールライト(左)とトーチポール トラスト(右)の点灯時の様子の比較

島:従来のポールライトって、支柱になっているところと光っている部分がはっきりと分かれているじゃないですか。近年は光の主張が強いものより光の差し込み方がさりげないのが主流で、あまり直接的に見えるのを嫌う傾向があるんです。間接照明がデフォルトになっているところも増えていますし、照明プランナーさんに話を聞いても「光がどこから出ているのかわからないぐらいがちょうどいい」という建築現場が多いんだそうです。そんなところに「ザ・光ってます」っていうポールライトを勧めてもなかなか取り入れてもらいにくいんじゃないかっていうのがスタート地点でした。もう少しさりげなくて、モダンなデザインにできないかということで斎藤さんに入ってもらったんです。丸吉さんは途中の開発段階から入ってもらったんですよね。

丸吉:僕がちょうどその頃に入社したんです。前職でも照明器具の設計はしてたんですけど、ダウンライトのような外観が目立たない照明が多かったので、デザインが前面に出ている照明は今までにない分野で、やりがいがありました。

斎藤: 僕自身もこういう最初の企画段階から入ることは初めてだったので非常にいい試みになりました。でも初期構想ではもっと和モダンなディテールだったんで、随分変わりましたよね。

島:和モダンの現場も多いので、どこかに和モダンがあればいいなと思ったんですよね。植栽の緑の中にあって、かつどこか温かみを感じる。そんな風に空間を彩るにはどういう光があればいいのかというのを一緒に考えていただきました。

商品企画担当者として商品の光り方を確認している様子

ノイズレスで情緒あるデザインとは

3者でトーチポールについて話し合っている様子2

斎藤:デザインの始まりの考え方としては「連灯の心地よいリズム」「ノイズレス」「情緒」「壊れにくい」。でも最初はもともとあった非住宅向けポールライトのモデルチェンジから考えていたので、上の光の部分をどうするかに囚われていました。ランプシェードを参考に、行燈や提灯をモチーフにしたものとか。

島:すごくたくさん考えてくださいましたよね。

斎藤:島さんにはアイデアをまとめたものを、2回程送ってるんですけど、全然響いてなかったのがわかったので、悔しくてその頃毎日通勤電車でスケッチしてたんですよ。こんな風に。

トーチポール構想時のスケッチ

丸吉:凄いスケッチの量! デザイナーさんみたいですね!

島:デザイナーさんですよ(笑)。でも私も初めて見ました、このスケッチは。

斎藤:最初は新しいシェードを作ろうという頭があったんで、いろいろ考えたんですけど、どうしても他社さんのものに似てくるんですよね。「これは超えられないな」となる中で、そもそも論を考え直して「光源自体を金物で包んでしまえばいいんじゃないか」という考えに行き着いたんです。

丸吉:「炎の煌めき」みたいなイメージなんでしたっけ。

斎藤:そうです。ライターやオリンピックのトーチや、焚き火台とかって、外気を取り込みながら、炎を守っているなとある時気付いたんです。そういう考え方で光源をガードしながら、光を外へ吐き出せば成立するのではと。スケッチを描きながらいろんなアイデアを行ったり来たりしてイメージを広げていった先に「孔」ありかなと。

島:模様もいろいろ考えていただいた中から汎用性が高くどこにでも馴染む「ドット」と、当初の和モダンの希望に沿った「カゴメ」になりましたね。

トーチポール トラスト・トーチパススタンド トラスの「ドット」柄
トーチポール トラスト・トーチパススタンド トラスの「カゴメ」柄

完成した2つの柄(左:ドット、右:カゴメ)


試作を重ねてデザインを形に

島:デザインの方向性が決まってからもまた大変でしたね。構造の部分でぶつかったというか、最初はデザインが先行しすぎて機能性が伴わなくて。

設計開発担当者として商品の構造を確認している様子

丸吉:照明器具としての機能性も確保しないと製品として成り立たないですからね。最初は光源が下にあるのに、光りのグラデーションを作るため下に行けば行くほど穴が小さくなるデザイン。光がうまく外にでなくて明るさが足りない状態でした。このまま進めても限界が見えたので、いっその事、光源を上に持っていったら…と試してみたら、明るさの要求はクリア出来ました。。

斎藤:その分、上部のデザインが削られたので、せめて光源の部分をできるかぎり薄くしたいと駄々をこねましたよね(笑)。

丸吉:斎藤さんの妥協したくないという思いが伝わってきました。商品を作るときは初期投資や材料費を考えて、組み上げて販売した時に適正価格に収まるかが肝。光源を上に持ってくるために部品が追加になるので、コストが上がらないよう1部品で成立するように成形したり、結構設計側でも工夫していきました。

斎藤:本当に丸吉さんがいろいろ試作してくれたのでイメージしやすかったです。例えば孔の開き方で光の漏れ方がどう変わるか、図面ではなく3Dプリンターでたくさん試作してくれたので、グラデーションの付け方にもこだわることができました。
島:光っている部分や柄のなめらかさの微妙な変化がわかりやすかったですよね。タイミングがあえば私も大阪オフィスに行って、個人の感覚だけでなく他部署のいろんな方や先輩方の意見を聞きながら決めていけたのはよかったです。

斎藤:孔を開けた板を丸めて溶接しようと思っていたけど、値段が合わないし溶接代(ようせつしろ)ができるのでデザインに妥協が必要になるという想定外もありましたよね。

丸吉:加工できる技術を再検討して、最終的にステンレスパイプをレーザーカットする技術が見つかったのでよかったです。

プロダクトデザイン担当者として商品のデザインの再現性を確認している様子

チームでの力で生まれるもの

トーチポール トラストの使用イメージ

完成したトーチポール トラスト

島:今年(2024年)2月にカタログ公開、3月に発売でしたけど、展示会でも好評だったと聞いて安心しました。最初は自分がぼんやりとデザインをブラッシュアップしたいなと思ったものでした。それがすごくかっこいい形で収まったし、お2人のおかげで満足のいく商品になったなと感じています。1人では形にならなかったので、本当にチームで作った商品。「私が企画者です」というより、「Creative Lab.で作りました!」と言いたいです。

斎藤:本当にチームの力でしたよね。企画の課題がおもしろかったのもありますし、発想が飛びすぎているところはうまく抑えてもらって、実感としてデザインする時に1度はみ出せる安心感みたいなものができました。チームとしていい妥協もできたし、結果的に思った以上にいいものができたんじゃないでしょうか。

丸吉:どうしても設計開発は割り切れるきれいな数字を求めてしまうんですよね。ものを作る時には誤差が出るもの。現実的な話とデザインの形のバランスを取りながら、いい着地ができたと思っています。

3者でトーチポールについて話し合っている様子3

斎藤:そもそも照明なのか、オブジェなのか、デザイン照明なのか、機能照明なのかってところなんですが。

島:多分機能照明なんですよね。空間に溶けこむ、なじむためのデザインなので、デザインが先に立つのではなく、よく見たらすごくデザインされた柄だなと思ってもらえたら。

斎藤:そう考えると「なじむ」は今回のキーワードでしたね。シェード部分も半透明にするのかクリアにするのかで議論して、光がやわらかくにじむ半透明にしましたし。

島:そもそも照明器具としては「光の質やどういう明るさが必要か」にこだわりがちで、これまで「空間に溶け込むためにどうするか」という価値づけに対するデザイン面からのアプローチがなかったんです。特に私がデザインは学んできていないので、商品としてどうあるべきかということは考えられても、どういうデザインになればその企画が叶うのかっていうところがどうしても弱くて。今回は斎藤さんにデザイン面での重みを持たせていただきましたし、丸吉さんには実際の形にしてもらいました。ありがとうございます。

丸吉:僕は実際に展示会で「いいデザイン」と褒めてもらって、商品としての価値を実感したんです。やっぱりお客様に認めてもらうと実感が湧きますね。今後、まちを歩いて製品を見かけるようになれば、より実感できるはず。そう考えると、チームとしてやっていく中で、僕ら設計がデザイナーや企画者の想いをどれだけいい形で具現化できるかにかかっている。個人的にはそのためのスキルをもっと高めていきたいですね。

斎藤:やっぱり成果物はみんなで共有することで気分が高まりますね!消灯した時にもまちに溶け込んで「あの風景よくなったよね」という風に、空間や風景にノイズのない、いいまち、いい風景が生まれればいいなあと思っています。


企画・開発・デザイン、それぞれの3人の作り手により生まれた「トーチポール トラスト」と「トーチパススタンド トラスト」。構想から含めると実に1年以上。それぞれの企画力・開発力やデザイン力だけでなく、それらが集約することでさまざまな相乗効果が生まれました。
デザイン性を持たせながら、目立たずどんな空間にもなじむことを目指したライトには、ここに書ききれなかったエピソードも含め、まだまだいろんな工夫と想いが詰まっています。ぜひ機会があればじっくりとご覧になってみてはいかがでしょうか。
また今後、新しくなったCreative Lab.から生まれる商品たちにもどうぞご期待ください!

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この記事を書いた人

CreativeLab.

『Creative Lab.』は、光を中心に屋外空間にイノベーションを起こすクリエイティブチームです。 デザインやアイデアで光の価値を創造するデザイン・企画チーム(AC)と、技術・開発で光の価値を創造する設計開発チーム(DC)で構成されています。 AC / DCで連携を取り、あらゆる屋外空間に合う光や価値を考え、新しくてワクワクする提案を行っています。

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