会議室から地球規模の未来を考える SDGsカードゲーム勉強会

国連加盟193カ国が2030年までに達成すべき目標を掲げた「SDGs」。2015年に採択されて以来、その名前こそ頻繁に聞くようになりましたが、具体的な内容を把握した上で自分ごととして理解し、行動できている人がどれだけいるしょうか。

2021年7月、タカショーデジテックでは改めて企業としてSDGsへの理解や活動を推進し、事業を通じて社会の課題解決に取り組むべく「サスティナブル推進室」を設置しました。企業として環境問題に積極的に取り組むと同時に、そこで働く社員に対しての環境問題への気づきを与えることで、「選ばれる会社、選べる人材」の育成を目指し、社内の環境改善、商品開発における環境負荷の軽減、社外の環境活動など、できることから進めていくことに。まずは社内の意識を高めようと、全社員対象にカードゲームを通じた勉強会を開きました。

カードゲームで体感する
世界のリアル

サスティナブル推進室の取り組み第1弾として開いた今回の勉強会。実際にどのようにSDGsの壮大なビジョンを達成していくのか。今回はその問題をカードゲーム「2030SDGs」の公認ファシリテーターである西田拓大さんを講師に招き、ゲームとワークショップを通じて2030年までの道のりを体験しました。

カードゲームのルールはシンプル。2人1組のチームに与えられた人生の目標に向けて、手持ちのお金と時間でプロジェクトをクリアしていくというもの。1つのプロジェクトを達成すると、報酬と次のプロジェクトがもらえるというルールです。

「このゲームは世界を模しています。現実の世界だと考えてください」と西田さん。それぞれのプロジェクトは、達成するごとに「世界の状況メーター」に変化をもたらします。世界の状況は、ホワイトボードの3色のマグネットで表され、それぞれ「経済」「環境」「社会」を示します。プロジェクトによっては経済状況が良好になっても環境が悪化したり、逆に社会が好調になったりも。ゲームを始めて中盤、途中経過を共有したところ、「経済17」「環境3」「社会4」という状況になっていました。しかもここまでの間に環境は2度「0」となっています。経済は絶好調ですが、環境は危機的状況、社会問題も深刻です。

相手との合意があれば、基本的にプレイヤー間でのどのようなやり取りも可能。お金や時間、プロジェクトは交渉次第で譲ったり売り買いすることもできることから、この状況を踏まえての後半戦、あちこちでプレイヤー間の交渉が始まりました。中でもよく聞こえてきたのは「時間がない」。西田さんが最初に話したように、このゲームはまるで現実世界のようです。いろんな課題の解決が進まないまま時間ばかりがなくなっていく感覚に焦りが生まれていました。

環境や社会問題に取り組むプロジェクトをチームを超えて応援するなど、徐々に空気が変わっていき、最終的に「経済15」「環境11」「社会10」と、経済は好調でありつつ環境も良好で豊潤な社会を実現するという、程よいバランスを保った世界状況に落ち着きました。

ゲーム終了時の世界の状況メーターは、参加した人の意識や選択、行動によってプロセスも結果も変わるようにデザインされています。例えば経済ばかりで環境と社会が壊滅的な状況で終わる場合もあれば、環境が保護されても経済が著しく落ち込んでしまう例もあるのだそう。最初に渡されていた「人生の目標」が達成できなかったチームが2チームあったことから、デジテックのSDGs達成割合は98%という結果に。「地球上の誰1人取り残さない」SDGsの理念もこの2%から改めて感じることができる結果となりました。

ブロックでつながっている
世界を実感

カードゲームの振り返りに続いて行ったのは、ブロックを使った共創ワークショップ。色や形でお題に沿ったものを作り、発表しあうというもの。これは自分自身の強みや弱み、10年後の理想の世界など、自分自身と向き合い、世界とどうつながるかを改めて考えるものでした。テーブルごとに自分の作ったものやその過程で考えたことを発表し、対話しあうことで、互いをよく知る交流にもなったと思います。「SDGsにも必要なのは対話」なのだと西田さん。価値観の違うさまざまな国や環境の人たちの中で、SDGsが共通言語になりうるのだということでした。

「風が吹けば桶屋が儲かる」というように、一見関係のないことが複雑に紐付いて、思わぬ結果を招くことがあります。西田さんは、スナック菓子を食べることが地球温暖化に繋がるという理屈を説明。そこには貧困や児童労働、森林伐採といった世界の深刻な問題が潜んでいます。

大きな問題であるからこそ、1つの国で解決できない。だからこそ一斉に同じ目標に向かうSDGsの本質に立ち返り、なぜSDGsが必要なのかを再確認する必要があります。

現在日本のSDGs達成ランキングは18位。ですが、例えばジェンダーギャップ指数は153カ国中120位であったり、地球の1年分の資源量を使い終える「アースオーバーシュートデイ」が今年の日本では5月に迎えてしまったりと、考える問題は山積みです。

「世界はつながっています。ゲームで体感していただいたように、自分の選択が起点になるんだと知ることでいろんな選択が変わってきます。私たちはゴールを自分で決めることができる。何かに取り組む際、持続可能な方法で作れないかと考えてみたり、地球規模でものごとを見て、これからの事業でできることをぜひ考えてみてください」と西田さん。さっそく各部門でできるアイデア出しを進めていくこととなりました。

終わりに

今回の勉強会で目的としたのは、SDGsの目標の細かな内容を理解することや知識を得ることではなく「なぜSDGsが私たちの世界に必要なのか」「SDGsがあることによってどんな可能性が生まれるのか」を感じることでした。未来の世代を犠牲にすることなく、いかに現在の要求を満たす開発ができるか。できることはきっとたくさんあるはずです。

サスティナブル推進室はまだスタートしたばかり。「選ばれる会社、選べる人材」の育成を目指して、社内環境や設備、製品やサービス、人材育成など、あらゆる面を整えていく必要があります。この日はその第一歩。これから従業員全員で課題に取り組んでいく結束力が強まりました。

この記事を書いた人

CreativeLab.

『Creative Lab.』は、光を中心に屋外空間にイノベーションを起こすクリエイティブチームです。 デザインやアイデアで光の価値を創造するデザイン・企画チーム(AC)と、技術・開発で光の価値を創造する設計開発チーム(DC)で構成されています。 AC / DCで連携を取り、あらゆる屋外空間に合う光や価値を考え、新しくてワクワクする提案を行っています。

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